英語新聞ウォールストリートジャーナル(WSJ)から見た起業・ビジネスのヒント

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グローバルビジネスマンなら必読の英語新聞「THE WALL STREET JOURNAL(ウォールストリートジャーナル)」。ウォールストリート・ジャーナル研究家の高尾亮太朗が、最新の記事を解説し、起業・ビジネスのヒントを提供いたします。

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【687号】賢い企業は値上げをこうする

ガソリンの価格表

by courtesy of Paulo Ordoveza

 

◎本日のニュース

1)見出し
How Companies Can Get Smart About Raising Prices

【出典】
http://goo.gl/QssuoU

 

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2)要約
企業にとって、値上げはバランスが求められる決断である。
というのも、

値上げをすれば顧客を競合に奪われるリスクがある一方で、
コストアップのため値上げをしない選択肢はないからである。
やり方を間違えれば収益悪化を招くが、
うまくやれば収益は向上する。

一番やってはいけないことは、割引の中止である。
というのは、企業が考える以上に、クーポンやその他割引は、
買い物客にとって重要だからである。また、
品質を下げた低価格ラインを導入すれば、
レギュラーブランドからのシフトを促すだけに終わりかねない。
容量変更による実質値上げも、利益率を維持できないばかりか、
騙されたと感じた顧客が怒りを拡散させる恐れがある。

一方、正しいやり方は、値引き理由を顧客に伝えることや、
値上げ商品の選別、割引の維持継続、
単機能低価格品の導入などである。
また、より価値ある商品に見えるようにすることも、
値上げを受け入れやすくする。

◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
Instead, they should focus on minimizing the pain
for shoppers who are the most sensitive to price increase,
by targeting discounts at them and offering
different versions of their product at different price levels.

4)キーとなる英文の和訳
その代わり、値上げに最も敏感な買い物客の苦痛を
最小化させることに、力を注ぐべきである。
そのやり方は、彼らだけを狙った割引を行い、
異なる商品を異なる価格帯で提供することである。

5)気になる単語・表現
minimize        他動詞     〜を最小限にする
sensitive       形容詞     敏感な

◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
まず、なぜ値上げが必要かと言えば、
それは原材料価格が上昇しているからに他なりません。
WSJの記事には、わかりやすいグラフが掲載されていますが、
まとめると次のようになります。

【メーカーが直面するコスト高】
原油卸価格→40%超の増加
中間財価格→15%超の増加
消費者物価→10%逆の増加
※2013年5月を2009年1月と比較

このグラフからわかることは、

原材料価格の上昇分が製品価格に転嫁できていない

ということです。つまり、
値上げがうまくできていないということになります。

では、なぜ値上げがうまくできていないのか。
その理由を探る際、参考になるのが次のデータです。

【スーパー買い物客の消費行動・店舗選択理由】
[消費行動]
常に割引を求める→61%
景気後退後割引を求めるようになり、今後も継続する→17%
景気後退後割引を求めるようになったが、景気回復すればやめる→
11%
割引を求めることはこれまでも今後も一切しない→11%

[近くにない店舗を選ぶ理由]
全般に販売価格が安いから→61%
特定の商品が安いから→53%
加工食品の品揃えが豊富だから→41%
生鮮品の品揃えが豊富だから→39%
PB商品の品揃えが豊富だから→26%
単なる習慣かよく知っているから→24%
素早く買い物ができるから→23%
有機食材など特別な商品の品揃えが豊富だから→22%
清潔だから→21%
顧客サービスがいいから→20%

これらのデータからわかることは、
多くの消費者が価格に敏感であるということです。
原材料価格が上昇しているので、
値上げせずに済むわけではないのですが、
値上げすれば顧客を競合他社に奪われるリスクがあります。
だから、値上げが進んでいないのです。

しかしながら、コストアップ分を
単に価格転嫁すればいいものではありません。
そこで、値上げの際にしてはいけないことを
まとめてみたいと思います。

【値上げでしてはいけないこと】
[1]     割引の中止
[2]     品質の低い商品を低価格で販売する
[3]     容量変更(減量)

1については、先述したデータをみれば、
まずいことがわかると思います。企業が考える以上に、
消費者はクーポン割引やその他割引に敏感なのです。
実際、次のような失敗事例があります。

【割引中止の失敗事例】
[1]90年代のP&G→クーポンなどの割引販促を中断。
数年後にシェアを大きく失い、割引を再開。
[2]直帰のJCペニー→値引きセールの頻度を下げる。
2012年度に10億ドルの売上を失う。

2について、低価格品を望む消費者向けに、
品質を落とした商品を低価格で販売することもよく見かけます。
このような低品質・低価格ブランドを、
ファイターブランドと呼びます。
ファイターブランドを導入しても、
レギュラーブランドからのシフトを促すだけで、
結局収益は減少することになります。しかも、
ファイターブランドに失望した消費者は、
レギュラーブランドやその企業自体に悪いイメージを抱くかもしれ
ず、
その悪影響はさらに広がる恐れがあるのです。

3について、消費者にわからないように、
パッケージは維持しながら容量を減らすというやり方です。
確かにグラムあたりの単価は上昇するものの、
包装コストや輸送コスト・その他製造コストは、
減量しても変わりません。よって、
利益率が悪化する可能性が高くなります。
さらに、容量変更を知らずに買った消費者は、
騙されたと感じ、その怒りをSNS上で拡散する恐れがあります。
企業イメージの悪化につながります。

では、どのように値上げをすれば、収益向上につながるのか。
記事が提案する「賢い」値上げ方法は、次の通りです。

【賢い値上げ方法】
[1]     値上げ理由を顧客に伝える
[2]     値上げ商品を選別する
[3]     タイミングを計る
[4]     割引を継続する
[5]     単機能品を低価格で販売する
[6]     より価値ある商品に見せる
[7]     今後予測されるコストアップ分まで値上げする

1については、してはいけないことの3の逆のパターンです。
数字としての価格だけでなく、
正当かどうかにも消費者は反応するからです。

2については、生活必需品よりも嗜好品の方が、
価格に敏感でないことに注目した方法です。
コストアップ分をそのまま上乗せするのではなく、
より生活必需品に近いものは薄く、
より嗜好品に強いものは厚く乗せ、
トータルでコストアップ分を賄うことを目指します。

3は、例えば既存品を値上げすることは、
顧客の抵抗を受けやすいかもしれませんが、
新製品ならば値上げではなく新たな価格設定になるので、
値段が通りやすくなります。さらに、
市場を主導する企業は、適切な時に値上げをして、
下位メーカーが値上げしやすい機会を提供することで、
業界全体での値上げを進めることができます。逆に、
下位メーカーは、リーダー企業に追随することで、
値上げをスムーズに行えます。

4は、してはいけないこと1の逆になります。
目的は、価格に敏感な顧客を維持するためです。
値上げをする一方で、クーポン割引も継続することにより、
価格に敏感な顧客を狙いうちした販促が可能になります。
一方で、その他買い物客には、
値上げ後の正規価格で販売できるので、
平均単価を引き上げることが可能になります。

5は、してはいけないこと2とは違い、
機能を絞った商品を低価格で販売することで、
価格に敏感な買い物客に対応するというやり方です。
例えば、アイパッドミニ(iPad mini)では、
メモリーの小さな型が329ドルで販売されています。
この型は、価格に敏感な消費者向けの商品なのです。
一方、その商品にもともと興味を持った買い物客には、
機能別に3つの商品を提案することで、
中間の商品に誘導することができます。
同じくアイパッドミニで言えば、
329ドルと659ドルの型ではなく
、459ドルの型も販売することで、
アイパッドミニに興味を持った買い物客は、
中間の459ドルの型を購入する確率が高くなります。
もし、329ドルと659ドルしかなければ、
その価格差から329ドルを選ぶ確率が高くなるので、
459ドルの型を導入することで、
単価を引き上げることができるのです。

6は、実際の価格と頭の中にある参照価格を比較して、
価値を判断するという消費者行動に着目したやり方です。
値上げした商品の価値をより高く見せるには、
比較対象の参照価格を引き上げればいいのです。
その一番簡単な方法は、
製品を詰めあわせた商品を販売するというやり方です。
例えば、スキンケア商品や美容品を詰めあわせた
「ホームスパ・パッケージ」を販売するとします。
この商品を見て消費者が参照価格にするのは、
スパで1日過ごす費用。この場合の参照価格は、
競合他社のスキンケア商品や美容品よりも高くなるので、
詰め合わせ商品の価値は高まります。同様に、
家族用に加工食品を詰めあわせたセットを販売すれば、
その参照価格はレストランでの食事や持ち帰りの費用となります。

7は、モノ(特に食品)は値上げする機会が
それほど多くないので、この機会を有効利用するべきです。
つまり、実際のコストアップ分だけでなく、
今後起こりうるコストアップ分も一緒に値上げした方が、
今後の値上げ自体を避けることができます。

値上げでしてはいけないこと・するべきことを、
もっと簡単にまとめると次のようになります。

【値上げでしてはいけないこと・するべきこと】
[してはいけないこと]コストアップ分の単純転嫁→
顧客離反のリスク
[するべきこと]顧客別・商品別の価格設定→平均単価の引き上げ

値上げによって計算上利益率を確保しても、
売れなければ利益は生まれません。よって、
いかに顧客の離反を避けて、
値上げをするかがポイントになります。
そこで、価格に敏感な買い物客と、
そうではない買い物客に選別する必要があるのです。
アメリカでは、クーポン(郵送により割戻しされる)を
活用できますが、日本では、
アメリカのようなクーポンは普及していません。
よって、日本での値上げを考えた場合、
商品別に価格設定を行い、いかに価値を高めるかが、
ポイントになるのではないでしょうか。
その際、正しいやり方の6のように、
比較される参照商品を従来とは異なるものにし、
参照価格を引き上げるというやり方は、
大変参考になると思います。


***************************
《今回のヒントのまとめ》
1)価格に敏感な消費者が増えている以上、
単純に値上げをすれば、競合に顧客を奪われる恐れがある。
よって、値上げは企業にとって難しい課題である。

2)やってはいけないことは、値上げによって
顧客の離反を招くこと。具体的には、
割引の中止やファイターブランドの導入・容量変更である。

3)一方、正しく値上げをすれば、収益を拡大できる。
具体的には、値上げ理由を顧客に伝えること、
値上げ商品の選別、良いタイミングを選ぶこと、
割引の維持、単機能品の低価格販売、
価値ある見せ方をすること、
将来のコストアップ分まで値上げすること、である。

4)顧客別・商品別に価格設定できれば、
平均単価を引き上げることができ、収益向上につながる。

5)日本では、アメリカのようなクーポンが
普及していないので、
比較されうる参照価格を引き上げることで、
より価値ある商品に見せることが、
最有力の方法になるだろう。
*************************


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編集後記
新聞報道を見る限り、
食品の値上げはどんどん増えています。
しかし、実際の売場やチラシでは、
値上げよりも値下げの方がまだ多いように感じます。
値上げをできる企業とできない企業の二極化が、
進んでいるのでしょうか。

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高尾亮太朗

1975年兵庫県姫路市生まれ。白鳥小学校・淳心学院・駿台予備学校神戸校・早稲田大学政治経済学部に進む。大学進学時に政治家を志し、早大鵬志会に入会。・・・続き
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