大手メーカーは割を食うことになる。
また、髭剃り自体をしない男性の増加も、
カテゴリー全体の縮小の要因となっている。さらに、大手ブランドの替刃タイプの価格上昇も、
ユーザー離反を招いている。その一方で、
単価の低い使い捨ての売上は伸びているという。
◎キーセンテンスとその翻訳
3)キーとなる英文
At least that's the view from Schick razor maker Energizer Holdings Inc.,
which blames rival Procter & Gamble Co.
for aggressive discounting that has depressed growth
in men's razor and blades category.
4)キーとなる英文の和訳
少なくともそう考えるのは、
シックの剃刀を作るエナジャイザー・ホールディングス社である。
エナジャイザーは、攻撃的な値下げで競合の
プロクター・アンド・ギャンブル社を批判している。
というのは、その値下げによって、
男性用剃刀と替刃カテゴリーの成長が損なわれてきたからである。
5)気になる単語・表現
view 名詞 (個人的感情・偏見を含んだ)意見、見解、考え
blame 他動詞 〜を(事実に基いて)非難する
aggressive 形容詞 攻撃的な;活動的な、積極的な
depress 他動詞 〜を意気消沈させる;〜を不景気にする;〜を下に押す
◎記事から読み取った今日のヒント
6)ビジネスのヒント
記事の中には、エナジャイザー・ホールディングス社
(Energizer Holdings Inc.)による、
プロクター・アンド・ギャンブル社(Procter & Gamble Co., P&G)社
に対する批判が多く掲載されています。その批判とは、
P&Gによる剃刀・替刃の過度な値下げがカテゴリー全体の成長を鈍化させた
というもの。高くても売れた替刃タイプの剃刀が、P&Gによる値上げにより、
儲からなくなった、ということになります。
替刃タイプの剃刀・替刃の売上減少については、
次のようなデータが掲載されています。
【替刃タイプの剃刀・替刃の売上減少データ】
売上金額→6%減少
売上数量→10%減少
※直近四半期
金額・数量とも減少していますが、
金額よりも数量の方が減少率は大きくなっています。これからは、
替刃タイプの剃刀・替刃の単価はさほど下がっていない
ということがわかるかと思います。ならば、
エナジャイザーによるP&G批判は、的が外れていることになります。
実際、替刃タイプの剃刀・替刃の売上減少は、
次のような要因によるものと考えられます。
【買えばタイプの剃刀・替刃の売上減少要因】
[1]競合の出現→剃刀の定期購入サービスの登場
[2]需要の減少→髭をオシャレとして楽しむ男性の増加
[3]低価格志向の強まり
→高単価の替刃タイプから低単価の使い捨てタイプへのシフト
1について、昨年このメルマガでも取り上げました。
【552号】ダラーシェイブクラブ、寡占のカミソリ市場に新規参入できた理由とは?
http://wsj.jugem.jp/?eid=645
数字は掲載されていませんが、WSJ記事によると、
ダラーシェイブクラブ(Dollar Shave Club)は、
それなりにユーザーを獲得しているようです。
ダラーシェイブクラブは、定期購買タイプのため、
毎月費用はかかりますが、毎月新しい剃刀を使うことができます。
また、ノーブランドの剃刀なので、大手よりも割安であることも
大きなメリットです。一方、ジレット(Gillette)や
シック(Schick)のような大手ブランドは利用されないため、
定期購買タイプが増えると、
大手ブランドのシェアは減少することになります。
2は、髭剃り人口の減少自体が、替刃タイプの売上減少の要因になっています。
実際どの程度増えているのかについての説明はありませんが、
無精髭や髭をファッションとして楽しむ人が増えている模様。
おしゃれに髭を生やす有名人の増加が、
髭人気につながっているのでしょうか。
3について、替刃タイプが減少する一方で、
使い捨てタイプの売れ行きは好調のようです。
先述のデータと同様に、直近四半期の使い捨てタイプの売上金額は、
4%増加しています。消費者の低価格志向の高まりが、
単価の高い替刃タイプから安い使い捨てタイプへのシフトを
促しているのでしょう。
P&Gは、安い使い捨てタイプの人気に直面して、
替刃タイプの特売を積極的に行なっているようですが、
それも裏目に出ているようです。というのも、
値段を下げる一方で、替刃タイプの剃刀の付属する
替刃の数を減らしているからです。従来付属していたのは2個ですが、
今は1個に減らしています。この「実質」値上げに消費者は感づき、
替刃タイプ離れを引き起こしているのではないでしょうか。
P&Gは、競合するシック(エナジャイザーのブランド)から
シェアを奪うためにジレット(P&Gのブランド)の「名目」値下げ
を行なっているのですが、逆に替刃タイプの市場縮小を
招いたことになります。これが、エナジャイザーの主張です。
2の髭剃りユーザーの減少はともかく、1・3は、
消費者が現状の髭剃り用剃刀ビジネスにソッポを向いたことを示します。
髭剃り用剃刀ビジネスはP&Gとエナジャイザーによる寡占状態。
だからといって、自由に市場を動かせるというわけではありません。
消費者ニーズに背けば、離反を招くのです。そしてその隙に、
ダラーシェイブクラブのような新規参入が起こります。
また、単価の高い替刃タイプ市場が今減少していることから、
それだけアメリカ消費者の低価格志向が依然強いということが
わかります。
Gillette http://goo.gl/n17gGC
Schick http://www.schick.com/
Dollar Shave Club http://www.dollarshaveclub.com/
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《今回のヒントのまとめ》
1)アメリカの髭剃り用剃刀・替刃の売上が減少している。
その要因として3つ上げることができる。
2)一つ目は、ダラーシェイブクラブのような
定期購買型の競合の出現である。
ノーブランド品を使うために、
大手ブランド品の売上は減少することになる。
3)二つ目は、需要の減少である。
無精髭やおしゃれとしての髭を楽しむ人が増え、
髭剃りをする機会が減少している。
4)三つ目は、低価格志向の強まりである。
単価の高い替刃タイプの売上が減少する一方で、
安い使い捨てタイプはシェアを伸ばしている。
5)アメリカの髭剃り用剃刀市場は寡占状態であるが、
消費者ニーズに背けば市場縮小や新規参入が起こる
ことがわかる。また、景況感が回復しても、
依然低価格志向が強いことも物語っている。
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